素晴らしきジャイアントロボ
僕の両親は共働きだった。だから学校終わりや、夏休みや冬休みはいつも1人だった。外に行って友達と遊んだりもしていたけど1番の親友はテレビだった。小学生高学年、夏休みは朝起きてラジオ体操に行って、朝ごはんを食べてテレビをつけて昼ごはんを食べてテレビを見ながら親の帰りを待っていた。確かあれはBSのNHKだったと思う。曖昧な記憶だし今もあるのか分からないけど10時ぐらいから夏休み子供アニメみたいな番組をやっていてそれ見るのが好きだった。その時放送されていたのが『ジャイアントロボー地球が静止する日』だった。衝撃的だった。面白すぎたのだ。このアニメ、とにかく敵が魅力的すぎるのだ。主人公の草間大作とジャイアントロボには一切魅力を感じなかった。敵が魅力的すぎるのと同時に強すぎて、これ…敵全部倒せるのか…?完結するのか…?と思っていた。その通りにこのアニメでは、ひと段落するところまでは描かれるが、最後までは描かれない。特に一番最初に僕が見た時は途中の話までしか放送されなかったから当時の僕は悶々とした。何年か前にブルーレイが発売された。今ではネットフリックスで見れる。
ジャイアントロボは、横山光輝という作家の漫画をアニメにしたもので、出てくるキャラクターは横山光輝先生が書いた他の漫画の主要なキャラクターなのだ。小さいながらにテレビを見まくって漫画も読みまくってネットもそこそこやっていた僕少年は、ジャイアントロボに出てくるキャラクターがいろんな漫画のキャラクターであることは理解できていた。うまく言い表せないけど、色んな作品の有名なキャラが出てきて仲間になったり戦ったりするのってワクワクするよね。横山光輝先生の書いた作品はおそらく誰でも知っているもので、水滸伝、バビル2世、三国志や鉄人28号、魔法使いサリーなどなど。そしてその作品のキャラクターが登場するのだ。例えば味方(?)の国際警察機構の九大天王には、魔法使いサリーに出てくる大塚所長、水滸伝の林冲などが出てくる。そして敵(?)のBF団(ビッグファイア)の最高幹部には三国志の諸葛亮孔明、ロボットを作っているのは鉄人28号のブラック博士などが出てくる。特にBF団のボス、ビッグファイアはバベル2世の主人公バビル2世なのだ。別に元作品を知らなくても面白いが、知っているとより面白くなる。
このアニメはネーミングがカッコ良すぎる。国際警察機構の支部長は“人間爆弾・静かなる中条”、BF団の皆大好き十傑集は、“混世魔王・樊瑞”、“衝撃のアルベルト”、“激動たるカワラザキ”、“命の鐘の十常寺”、“暮れなずむ幽鬼”、“眩惑のセルバンテス”、“直系の怒鬼”、“白昼の残月”、“素晴らしきヒィッツカラルド”。やっぱりカッコ良すぎる。
特に僕が好きだったのはBF団十傑集の素晴らしきヒィッツカラルドだ。こいつの能力は“指パッチン”だ。指パッチンをすることで真空波を生み出しなんでもかんでも真っ二つにするのだ。カッコ良すぎるゼ…。味方がヒィッツカラルドにバッタバッタと真っ二つにされていく。かっこよさと憧れと同時に誰がコイツ倒すんだよと恐怖を感じた。最後は同じ十傑集であるマスクザレッドに簡単に倒されてしまう。震えた。あんなに強くてかっこいいヒィッツを倒すなんて…コイツはどんだけ強いんだよって。
それから僕は嫌なやつがいたらコッソリそいつに向けて指パッチンをしていた。
※フィクションデス