空想社会人日記

※フィクションです

Yとのこと②

ひとまず、どの新人がどんな子かを把握するために色んな会話をした。新人と先輩のペアリングを決定するまでの猶予は1ヶ月。その期間の間にどんな性格の子かを見極めて相性を考えて決定する必要がある。
Kはひたすら真面目でKの趣味等の質問をしても「先輩はどうなんですか」と自己開示をあまりしてくれない子だった。
Rはなんだか物理的身体的距離が近かった。いろんなことに気づき、いろんなことを質問してきてくれた。ただその分少し注意力が散漫で集中力がない子だった。そして少し距離が近い。
Yはなんだかよくわからないけど、自分と近い思考をしている子だなと思った。初めて喋った時に僕が「職場の女の先輩はお母さんだと思ってる。お母さんに無理はさせられないし、重いものとか持たせてられないから、手伝ってるよ」と言うとYは「私もイマジナリーお母さんにはそうしてます」と言った。????????。どういうこと?イマジナリーお母さん?シンエヴァンゲリオンに出てきたな、そんなの。「お母さんいないの?」「え?普通にいますよ」「それやったら普通のお母さんでええやん、なんでイマジナリーやねん」「ほんとですね笑」。変なやつだった。でも自分と喋ってるみたいだった。僕もイマジナリー〇〇とか使うから。
そんな感じで受け答えが少し変わっていて、冗談で言っているのか本気なのか良くわかなかった。でも僕もそんな感じなのだ。僕もよく変わっていると言われるけど、自分ではそうは思わないし、人類の平均、ど真ん中だと思っている。Yもそんな感じだった。

新人が入職直後の研修で記入していた課題をこっそり読んだ。Kは小さな文字で真面目な文章を書いていた。また何度も書いては消して書いた後があり、あぁこの子は真面目な子なんだなと思った。
Rは真面目な文章は書いてあるが、研修で学んだことを踏まえて新しい自分の考えを書いていた。この文章構成は僕も良くやる。研修を実施したやつはこういう学びをして欲しいんだろ?みたいな文章だ気がきくし頭が良いんだろうなと思った。
Yはすごく気持ちが乗った文章を書いていた。読んでいて1番面白かった。書き直した後がなく、文章の装飾が多く、気持ちを乗せてでスラスラ書いたんだろうなと思える文章だった。形容詞の装飾が多く、簡潔に人に伝えようと思ったらもっと削ってギュッとした文章に変えることはできるけど、そうじゃない分思いが伝わってきた。Yは面白いやつだなぁ〜、Yの指導係になれれば楽しいだろうなぁ〜と思った

新人は最初の夜勤は先輩の後ろをついて周り、どんなことをしているのか見て学ぶ。夜勤に慣れるという意味もある。シャドーというやつだ。新人がどの先輩の夜勤のシャドーするかは上司が勝手に決めることになっている。Yの夜勤シャドー研修は僕が担当した。その時にいっぱい話をした。今年一年の目標や勉強の仕方、家で何をしているのか、家族構成や趣味の話など。
僕は新人が来たら家族や恋人の話を聞くようにしている。気になるからじゃない。仕事で疲れたときに話を聞いてくれる人や心の支えとなる人がいるかどうかは重要だからである。今年の新人は全員恋人はいなかった。
Yは「Rは最近フラれたんですよ。私は2回生の時に少し付き合っている人はいましたけど、今はいません」といっていた。
Rは「最近お別れしちゃいました。Yはもともと追っかけ?みたいな感じで猛アタックしたんですけど、なんか色々あって別れたんですよ」と前に言っていた。よく分からないけど、今現在いるかいないかが気になるだけであって、過去のことは正直どうでも良いから深くは聞かなかった。

僕は新人を指導する時は、あまり技術や方法は口うるさく指導しないようにしている。そんなものは上のおばさまたちがすることだ。僕はどちらかといえば、こずるいやり方や、考え方、職場での立ち回りの方法など、メンタルや精神面、思考面に働きかけようとしている。僕の性格、特性もあって変な例えや抽象的な表現。漫画や本、映画からの引用を用いて指導することもある。

KとRは話していると僕の発言に対して「え?どういうことですか?」となる場面が多かった。しかしYはふむふむと僕の話を聞いて、納得している様子だった。Yには僕の言っていることが理解できるらしかった。Yの話を聞いていくと、好きな漫画はジョジョであり、人生のバイブルであることがわかった。僕と同じだ。なるほど、だから僕の言っていることが理解できるのかッ‼︎と思った。
ぜひ僕の黄金の精神を受け継いでいって欲しい。

指導係3名が新人3名の誰を指導するのか決めて上司に報告するタイミングがやってきた。本来は新人の特性、得手不得手と指導係の特性、得手不得手をいいように組み合わせて決定する。しかし、今年の新人も指導係も特に目立ったことはなく誰がどの新人を指導してもあまり変わらないのではないかという話になった。
僕は、完全にYの指導係がやりたかった。Yは僕の話を引っ掛かりなく理解してくれるため、圧倒的にやりやすかった。また、趣味や嗜好、思考が似ていた。だからお互いにやりやすいのではないかなと思っていた。でもそんな理由でYが良いです‼︎なんて言えないから、黙っていた。

誰がどの担当になっても良いから、夜勤一緒になったペアで1年間やっていこうかという話に最終的に落ち着いた。嬉しい、僕はYの指導係だ。憂鬱な気分が晴れていく気がした。僕は指導係は去年もやっていて、もううんざりしていたからだ。でも俄然やる気になった