空想社会人日記

※フィクションです

Yとのこと⑦

Yの耳には9つのキラキラしたピアスがついていた。でもじっと見るのも気持ち悪いから見れなかった。

僕は前の彼女と7年も付き合ってたから、久しぶりのデートって感じで全然感覚が掴めなかった。相手が自分のことを好きなのかを探りながら、相手に自分のことを好きになって欲しいって考えながら話して動くのってすごく神経を使う。疲れる。でもそんなことぐじぐじ考えててもしょうがないなとも思った。

僕はちょうどその時『野生の思考』レヴィ=ストロース1962年著を読んでいて、それの話をした。ものすごく分かりにくくて変な話をしたと思う。Yは頑張って理解してくれようとしていたし、笑って話を聞いてくれた。

僕が道を間違えて怒らずにいてくれた。めちゃくちゃ暑いのに、申し訳ない。

前から自転車が来た、僕は避けようと思った。その時にすでにYが減速して僕の後ろにスッと入って自転車を避けた。
僕は感動した。
僕は元彼女と歩いていて、前から自転車が来た時に減速して彼女の後ろに入って避けようとした。すると彼女も減速して僕の横にピッタリついてきた。それでは自転車は避けれない。元彼女は自転車が前に来ていることに気づけなかったし、僕が何で減速したのかも理解できていなかった。最初は僕は自転車を避けるために減速して1列になって避けようねとしっかり解説したが、それを何回も何回も元彼女は繰り返した。ついには7年たっても繰り返した。

それを出会ったばっかりのYがやってのけたから僕は感動してしまった。
もうこの瞬間には僕はYと一緒に人生を進んでいきたいと思ってしまっていたのかも知れない

暑い中30分ぐらい歩いて入ったランチでも人がいっぱいで20分ぐらい待つことになった。申し訳ない、予約しておけばよかった。僕としてはYと話す時間が増えたからよかったと思ってたけど、Yに幻滅されないかなと不安だった。誘ったなら予約しておけよ!って。こわいよ〜

お昼ご飯はYとはサンドイッチを頼んで半分ぐらい食べて残りは僕に食べさせた。食べなすぎたろ。ここでやっとちゃんとYの姿を見れた。可愛い格好だった。うぬぼれにも僕と会う時に可愛くしてきてくれたことが嬉しかった。

お昼のあとモディリアーニを見に行った。
僕は作品の解説をしっかり読むし、結構近くで絵を見るタイプだけど、Yは遠目でみるタイプだった。(あぁ、興味ないよな…別に美術館なんて若い子には楽しくないだろうしなぁ、つまんないよなぁ)って思った。でもYは視力が良く2?ぐらいあるらしく、別に近くに行かなくても見えているらしい。本当か?

Yをエスコートしながら美術館を回った。Yは華奢で、洋服がひらひらしていね、少し良い匂いがして、僕はこの場で抱きしめて持って帰りたくなった。危ない。暴走してしまいそうだった。

美術館をあとにして近くに科学館があって入った。Yはプラネタリウムが好きらしくてもうラストの公演だったから入ってみた。声優の梶裕貴の声だった。Yが声優が好きだって知っていたから、始まった瞬間Yの方を見た。Yも驚いた顔で僕を見ていて目を見合わせていた。
僕はプラネタリウム中寝た。睡魔に勝てなかった。緊張して早起きしちゃってたし。
昔彼女に映画中に寝てバチギレられたことがあったから、やらかしたと思った。
でもYも「私も寝ちゃいました〜」と言っていた。本当かどうかは知らないけど、気を使ってくれたのかもしれないけど。嫌われなくてよかった。

帰ろうと思って科学館の出口で運命の出会いをした。
そこいたのは”學天則”。
みなさんご存知だろうか、東洋初のロボットである學天則。写真や文章でしか知らなかったけど、いつか見てみたいなー、その時代に生きてたら見れたのになーってずっと思っていた。それが急に目の前に入ってきて一瞬でテンション爆上がりしてしまった。Yに「写真撮ってくれ!」と頼んで撮ってもらった。

夕ご飯を食べに向かった。こほ時も僕は方角を間違えた。Yは怒らなかった。暑いし、ヒールも大変だった思う。申し訳ない。

おかしかった。僕はいつも東西南北がなんとなく分かるし、地図をみて方向を間違えるなんて有り得なかった。たぶんすごく緊張していたんだと思う。新しい自分の発見だった。僕も緊張するといつもの自分じゃなくなるんだなって思った。

夜ご飯を食べていっぱい話をした。学生時代に付き合っていた彼氏と別れた理由を話してくれた。Yが一方的に振ったと思っていたけど、しっかりと理由があって少し安心した。

Yが僕のことを好きか確信は持てなかったけど、僕の気持ちは分かった。Yのことが好きだと思った。だから別にYにどう思われても、他の人にどう思われても良いやって思った。だから迷わず帰り道にプーさんのぬいぐるみをお土産で渡した。喜んでくれて嬉しかった。

「(學天則を見つけたとき)今日イチめちゃテンション上がってましたもん。私に会った時もそんくらいの反応してほしかったよってくらいでした」
「私人生で學天則に嫉妬する日が来るとは思ってなかったです」
「でも喜んでるのみるの楽しかったです」
「先輩がくれたプーさんが、私の上に乗っかってくれるんですよ、鼻血出そうです」

と帰った後にラインで言ってきた

いやいやもうこれで俺のこと好きじゃないってのは無理があるよな

でも僕は自分に自信がないし、女性の考えてることは分からないし、こわいし

でも今日が楽しかったことは確かだった