空想社会人日記

※フィクションです

Yとのこと⑩

 

付き合ったら付き合ったで距離感がよく分からなくなってしまい、ずっとしていたLINEも送るのをためらった。

でも僕は素直になると決めたから会いたい時は会いたい、好きな時は好きと言うように心がけた。

いつから自分のことを気になっていたのか尋ねた。
僕は会ってすぐに気が合うなと思ったこと。彼女の別れるタイミングを見計らっていたところにYが現れたこと。心配の気持ちから好きになったのかもしれないこと。彼女に気を使えないなと思っていたことをちゃんとできていこと。先輩が後輩に手を出す異常性など色々包み隠さずに話した。

僕のことをいつから気になっていたのかは分からないと言われた。
Yは出会った時にはビビッとは来なかったらしい。
出会った日に僕がYの肘を「しわくちゃやな、脳みそみたい」と言ったことで『私はこの人に一生着いて行く』と決意したことを教えてくれた。意味が分からない。そんなこと言われてそうはならんやろ。

出会って数日後に僕に長年付き合っている彼女がいることを人伝に聞いて『あ、なぁーんだ。彼女いるんだ。残念』と少し思ったらしい。
そういえば最初の方「結婚するなら私のこと絶対呼んでくださいね。私結婚式参加するの夢なんです」とか言っていた。
僕は「いやー、今の彼女とは結婚は無いかな。」と返していたけど、僕の気持ちを確認していたのかな。

僕は天邪鬼な性格だから、可愛い子には可愛いとか言えない。周囲の人間が可愛いと思っているならせめて僕だけでも可愛いと思ってはいけないとか思っちゃう。だから前の彼女には可愛いなんて言わなかった。
でもYには積極的に思ったら言うようにしている。でも可愛い可愛いって言っても他の人も言っているなら意味ないし、僕という特異性は発揮されないとか思っていたから「みんな可愛いと思ってるし言われるなら、僕だけでも言わないでおくよ」と言ったら「他の人からの可愛いなんていらない」と言われた。
Yは僕から言われたいらしい。

でもみんなが思っていることを僕が改めて言うなんて、大衆化したような、なんだかモヤモヤした気分になることは確かだ。

僕が特別な人間なわけはないし、他の人から見てもそうじゃないと思うけど。
僕は僕だけの世界では特別でいたい。

彼女はおそらく他の誰にも言えなかったであろう、過去の男性経験の話をしてくれた。僕を信頼して話してくれたと思って嬉しかったし。その話を今まで誰にも言えなかったんだと思うと心が痛かった。話してくれてありがとう。
僕が僕自身で僕のことを特別にするのではなく、僕は彼女に特別にしてもらおう。
そして彼女の中だけで特別でさえいれば良いのかもしれない。