空想社会人日記

※フィクションです

10月31日と11月1日

 僕たちが付き合い始めたのは11月1日だ。でも本当は10月31日ハロウィンの日。 夏休みが終わって親交を深めた僕たちはだいぶ仲良くなっていた。ご飯を断られたこともあったけど、お互いの家でご飯を作りあったり、相変わらず夜散歩したりバトミントンをしたりしていた。お月見の日に自分で団子を作って近所の友達や彼女に配った時は変なやつだなコイツって目で見られた。
 

 10月半ばにUSJに一緒に行った。子供の時、親に連れて行ってもらったきりで13年ぶりだった。僕はデートだと浮かれていたけど、後々きくとその当時は僕のことをなんとも思っていなかったらしい。そりゃないぜ。夜の公園でバトミントンをしている時に「好きな人いないの?いるなら相談乗るよ」なんて言われて、君のことが好きだよって伝えたりしたけど冗談だと思われていた。
 

 10月31日。たしかその日は、僕は家にいて彼女は友達とハロウィンに出かけていたと思う。帰ってきて、土産話と目ん玉と唇と前歯の飴のお菓子を買ってきてくれた。そんなものでも素直に嬉しかった。僕は改めて告白した。好きだから付き合って欲しいと。確かその時彼女は僕の太ももの上で寝ていたと思う。そんな状況で断られることってあるのだろうか。「えー、でもなー」「良いじゃん。付き合っても今とおんなじ感じで変わらないよ。」「うーん。でも私記念日とか覚えられないし、めんどくさいしなー」「確かに、でもあと2時間で明日になったら、11月1日に付き合ったことにしようよ。全部1だし分かりやすいよ」「うーん。なら良いよ」。付き合えた。我ながら必死だったし、ダサかったと思う。これが、付き合い始めたのが10月31日であり11月1日である理由だ。当時彼女は別に僕のことを好きじゃ無かったんだって、悲しいね。なんなら匂いが嫌いだったらしい、今では好きらしいけど。よく付き合えたな。
 

 とにもかくにもこれが僕たちが付き合った馴れ初めだ。
 

 僕は彼女との出会いは運命だと思っている。お互い一人暮らしで、家は上下。多くの同級生の中でゼミが一緒だった。運命以外のなんだというのか。

 彼女は僕が初めての彼氏らしい。詳しいことは知らないけど彼女を信じるとそうらしい。僕が言うのもなんだが彼女は僕のことをすごく好きになってくれている。怖いほどに。鳥が卵から生まれて初めてみたものを親だと認識することを“刷り込み”というが、彼女にとって僕は初めての彼氏で、彼女の人生にとって1番の存在が僕であると思いこんでいるんじゃないかと不安になる。刷り込みによって関係性を洗脳されているのではないかと心配になることがある。何人かと付き合ったうえで僕を選んでくれたなら自信を持てるけど。でも彼女が幸せならそれで良い。もしかしたら彼女にとって1番の存在がたまたま、下の家に住んでいて、1番最初の彼氏だっただけかもしれない。それこそ運命だったのかもしれない。それならそれでいい。僕は彼女以上の女性はいないと思っている。恥ずかしいから言わないけど。

 

 彼女は少し馬鹿で、気の利かない部分があって嫌な気持ちになることもあるけど、それも引っくるめて彼女のことが好きなのは確かだ。僕は彼女のどんなところが好きなの?聞かれると「僕が定規なら彼女は分度器なんです。そんなところが好きなんです」と答える。僕はきっちりとした性格で、彼女はあんまりきっちりとはしてないけど、僕とは違う角度でものを見ていてハッとさせられることがある。そんな関係を文房具に例えて表現しているが、あんまり理解されないけど、もしかして表現下手くそなのかもしれないけどそんな感じだ。


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※フィクションデス