空想社会人日記

※フィクションです

醤油貸してください

 LINEはまだ来てない。ゼミで会ってはいるが喋ってはない。梅雨ぐらいの頃だったと思う。1人暮らしはやっぱり食生活が乱れる。彼女は栄養系の学科だったため、何を食べるのが体に良いのか教えてもらおうとLINEした。「豆腐」。返信。嬉しかった。豆腐かあ、まあそうだよなと思いながらスーパーで豆腐を買った。でも家に醤油が無かった。一人暮らし始めたての男の家には調味料なんて塩ぐらいしか無いのだ。だから醤油を彼女に貸してもらった。この醤油を貸してもらうことが全ての始まりだったと思う。後々、お返しに漫画を貸したりと交流していくことが増えたからだ。でも、醤油を貸してもらった後、連絡を取った時はもう夏だったと思う。お互いに忙しかったからか、興味が無かったからかは分からない。あとブロッコリーも良いと教えてもらってとりあえず鍋でそのままブロッコリーを茹でた記憶がある。 

 夏、大学生初めての夏。僕も彼女もバイトしていなかった、学科の性質上結構忙しいからバイトしていなかった。僕にいたっては、自分の1時間の価値は1000円以上の価値があるのにバイトなんてしてられないと生意気こいていた。バイトもしていない大学生は夏休み暇で暇でしょうがない。お互い、暇、寂しさを埋めるためにお互いに都合の良い存在だったのかもしれない。一緒に漫画を読んだり、夜の公園でバトミントンしたり、一眼カメラでガチャガチャのおもちゃをいかにカッコ良く撮れるかを競ったりした。楽しかった。僕はほんのり彼女のことが好きになっていた。ほんのり。なんで好きになったのかは分からない。そういうものだと思う。僕は彼女の好きな所はいくらでも言えるけど、なんで好きになったのかは言えない。分からないから。僕は好奇心が強いから彼女のミステリアスな部分に惹かれて、彼女のことをもっと知りたいと思った気持ちが、好きという気持ちと一緒になってしまったんだと思う。でもどんなにミステリアスな人でも、結局はただの人間で、自分とあまり変わらない存在なんだと分かった時少し冷めてしまう。でも好きは好きのままだった。


 その夏。僕は同じ映画を3回みた。覚えている。ジュラシックワールドだ。1回目は友達と観に行った。すごく面白くて別の友達に紹介すると、その友達と行くことになった。面白かったから別に2回目でも良かった。彼女にも紹介した。そしたら一緒に行くことになった。この時が初めて彼女とのお出かけだったと思う。3回目だった。上映中寝た。ごめん。
 夜ご飯を誘ったら「今日はもうご飯炊いちゃってるから無理」と断られた。なんだその理由。
 

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※フィクションデス