空想社会人日記

※フィクションです

謎の女:ミサキ①【これは逆ナンか…?】

これは謎の女、ミサキについての記録。
事実と僕の思ったことのみを記していこうと思う。


2021年9月。僕は仕事が21時前に終わりそのまま家には帰らなかった。向かったのはヨドバシカメラ。明日は休みだったので彼女と遊ぶためのボードゲームを買おうとしていた。

 

僕は遠足の時のお菓子を買うのにものすごく時間がかかる。限られた金額の中で最適解を見つけ出さないといけないからだ。購入するボードゲームを選ぶのにも時間がかかる。

 

たしか21時過ぎぐらいだったと思う。女性が話しかけてきた。

 

「あのーすいません。ボードゲームとか…こういうの詳しいですか?」
突然の出来事だった。僕は両耳にイヤホンを装着しATフィールドを周囲に貼っていたのにも関わらず、そのバリアをこじ開けて話しかけてきた。


『いやぁ全然、僕も最近知ったので…』とインキャ感全開で返答した。


「えー、そうなんですか?でもめっちゃ詳しそう‼︎」「私、明日職場の先輩の家でご飯食べるんですけど、その時に盛り上がれるようなゲームを探してるんですよ。よかったらおすすめ教えて貰えませんか?」
ぐいぐい来る女である。そもそも何故僕に聞いてくるんだ。店員に聞くだろ普通。


『へー、そうなんですね。大変ですね。何人ぐらい来るんですか?』
女性に対して免疫が無い僕は突然の出来事と非日常と女性が話しかけてきたことに戸惑いながらも、生まれ持った優しさが発動し、相談に乗ってなんとか解決してあげようと行動してしまった。


「たぶん5、6人だと思います。てか教えてくれるんですか?優しい‼︎」


『うーん、それだったらやっぱりおすすめコーナーにあるやつとかで良いんじゃないですか?カタンとか面白かったですよ』
今思えば、カタンなんかオススメするなよ。職場の先輩と後輩が集まってお酒飲んでカタンなんかしないだろ。酒飲んで飯くってカタンして盛り上がるわけないだろ。

 

ゲームを探している間、質問攻めだった。
・独身か否か
・職業
・生活圏内
・食事に誘ってもいいか
・お酒が飲めるか

 

僕がミサキの方を一切見ずに会話を進めるので
「ちゃんと見てくださいよ。私そんなに信用できない見た目してますか?」とこちらを見るように提示してくる。
なんだこの女、上手だ

 

最終的にパーティーゲームコーナーのゲームを通して結婚観や恋愛観を知れるという訳の分からんパーティーゲームを紹介した。


「ありがとうございます‼︎。これなら盛り上がれそう‼︎。そうだ、良かったら友達になってくれませんか。私田舎から出てきて友達がいないんです。LINE交換しませんか?」


『いや…知らない人には教えられません。大丈夫です、僕も友達少ないですけど、なんとかやっていけますよ』


「えー、友達いっぱいいそうじゃないですか。私ってそんなに信用できない見た目してますか?じゃあ自己紹介しますね。〇〇ミサキです。女性限定のエステで働いてます。私九州から出てきたんですよ、だから少し訛ってますよね」


『あそうなんですか、僕も福岡出身です。奇遇ですね。』


「えーそうなんですか、じゃあもう運命じゃないですか。これはもう交換するしかないですね」


もうめっちゃぐいぐい来る。さすがの僕もわかる。これはヤバいやつだ。詐欺か宗教か、高いツボを買わされるかだ。LINEを交換したら何かに悪用されるかもしれない。でも待てよ、今日はボードゲームを買いに来たんだ。とりあえずLINEを交換したら帰ってくれるかもしれない。解放してくれるかもしれない。


『わかりました。いいですよ。交換しましょう。どうやってやるんでしたっけ。』


「今度ご飯とか誘ってもいいですか?せっかく出会えたんですし、もっとお話ししたいです…」

 

とLINEを交換し終えた時

〈🎵〜🎵〜本日はご利用頂きまして誠にありがとうございます。まもなく閉店の時間です〉と放送が流れた。

 

22時だ。閉店だ。この女、閉店まで話しかけてきやがった。


「あっ、もう閉店ですね。22時だ。LINE交換してくださってありがとうございました。じゃまた連絡しますね」とミサキはさっそうと帰っていった。


そして、僕は閉店まで話しかけられ続けた結果、何も買うことができず帰った。

 

 

おそらくみなさんもそうだと思うが、家の中の自分と職場や学校での家の外での自分は別々に存在している。言い換えるのであれば、一人や家族、恋人といる時の素の自分と、職場や学校での作りあげられた自分がある。作り上げられた自分でいる時は、女性と話すことなんか屁のかっぱである。なんなら、学校も職場も女性の方が多く90%以上を占めているため話せないと生きていけない。素の自分、根っこの部分は、おどおどとしたインキャそのものである。イヤホンをして一人で買い物をしている時なんてまさしく素の自分状態である。そんな状態でいきなり女性に話しかけられたらインキャは動揺するしかない。


正直、買い物をしていて知らない女性に話しかけられることなんて初めてだった。これが逆ナンか…‼︎と思って少し嬉しくなったのは確かだ。


不思議な体験をしたなぁと、すぐに彼女、学生時代の友達グループに報告をした。

 

家に着き冷静になって考えた。


やっぱりおかしい。
おかしな点はいくつかある。

 

まず、ゲームを本気で探している様子が無かった。そしてお気づきだろうか。このミサキという女、結局ゲームを購入していないのだ。閉店まで僕に話しかけ、LINEを交換したあと、おすすめしたゲームを購入せずそのまま帰っているのである。おかしい、いやおかしすぎるかもしれません。ゲームを買わなかったら、翌日の夜の先輩たちとの飲み会に準備できないじゃないか‼︎

 

自分のことは自分がよくわかっている。顔は不細工だし、足は短いし、12時間働いてボロボロの状態だし、少なくともその場で声をかけないと二度と会えない、今話しかけないといけないと思わせるような人間ではない。逆ナンされるわけがない存在である。

 

調べてみると、ヨドバシカメラのゲームやプラモデル等のコーナーで、女性が話しかけてきて宗教の勧誘等をしてくる事例がいくつかあるらしい。女性に免疫がない純情な男性をターゲットにしている悪いやつらだ。


ミサキは何の勧誘もしてこなかった、しかしもし仮に、このミサキという女がなんらかの勧誘目的では無かったとしても、閉店まで話しかけ僕は何も買えずに帰っているわけだ。他人の都合をまったく考えられていない。人のことを思って行動できない奴なんて願い下げですのよ。

 

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