空想社会人日記

※フィクションです

謎の女:ミサキ④【どういうこと?】

僕たちはお寿司屋さんに入った。
そしてこのミサキという女、30分で帰ったのだ。



店に入るとすぐに、店員さんに注意を受けた。
「飲み物の持ち込みは控えてください」
豆乳である。
豆乳飲んで男と待ち合わせすな、ほんで飲みきれ

席についてマスクを外した。
この時初めて僕はミサキの顔を見た。向こうも僕の顔を初めて見たと思う。
正直な話、意外と可愛いなと思った。僕は、かっこいい女性がタイプだ。ミサキはどちらかというと可愛らしい感じだったからタイプではないけど、少なくともブスではなかった。
反面、僕はブスだからミサキはさぞがっかりしたことだろう。

この時やっとミサキを見たと思う。逆ナンされた時は緊張していて見れていないし、僕は根っこがインキャだから女性の顔を見て話すことなんかできない。
そこでミサキがスーツを着ていることに気がついた。
ミサキは僕に最初女性専用のエステティシャンだと言っていたが、どうやらそこらへんの会社の事務に転職していたらしい。
本当か!?

転職してしんどいなら、良い仕事紹介しようか?っと言ってみると
「ええ!何それ! 逆マルチ??」
初めて聞いたよそんなツッコミ。

会話の中で1つだけ気になったのは「なんか、思ってた感じと違うね。かっこいいね」という発言。
その時は何言ってんだよと返したが、おかしな発言だと思った。
まず、第一に僕はかっこ良くない。お世辞にも。彼女にすら言われたことがない。
僕のことをかっこいいと言ったのは人生で2人、高校生のときの同級生のOくんと、職場の先輩のTさんだ。どちらとも変なやつだから、ミサキもだぶん頭のおかしなやつなんだなと思った。それと同時に、攻めてきたなとも思った。宗教、マルチ勧誘のため、そんなことを言ってこっちをその気にさせようとしているのだ。
おいおい、攻めてくるなぁ って言っちゃったもん。
ミサキ、お前で3人目だよ。


「私二郎系ラーメン食べてみたいんだよね」と3皿しか食べず注文の手を止めたミサキが言った。
二郎系なめてんのか、そんだけしか食べれへんかったら絶対二郎系なんか無理やでと突っ込んだ。ちなみにこれは伏線である。
「えーでも食べてみたい。年明け一緒に行こうよ」
まあいいよ。食べれるか?結構しんどいで。
「まあなんとかなると思う」

なんて話をしてたら、ミサキがケータイをみて「あっ!やばい!忘れてた!」
どうしたん?
「ごめん!明日やと思ってた集まりが今日やった。友達が地元に帰るらしくて離れ離れになるねん。それのお別れ会が今日やった」
「ほんまにごめん、これ千円置いていくわ!今日はありがとう」
「じゃあ、年明け二郎食べにいこな!君に初二郎は私がもらった」
と謎のキメ台詞を残し、ハイタッチをしてミサキは去っていった。

いったいどういうことなんだろう。。。

まあでもお腹すいたしお寿司でも食べるか

僕は追加で3皿と茶碗蒸しを食べ店を後にした。

帰りの電車の中、冷静になって考えた。

やっぱり変だ。

僕の予想では、本当は予定なんかなくて、僕がマルチ、宗教の勧誘をバリバリ警戒していてもう諦めて30分で切り上げた、もしくは僕がカッコ良くない、思っていた人とは違って興味がなくなって切り上げた。このどっちかだろうと思った。それぐらい、不自然だった。そもそもそんな大事な集まり間違えるか???

すぐに学生時代の男友達たちに連絡し報告した。


だが話はこここで終わらないのだ。伏線はまだ未回収。
20時30分にミサキと合流し、21時には別れている。22時には家につき、シャワーを浴びて、ケータイを触っていた23時。急に電話がかかってきた。
ミサキからである。

出てみた

「今日はほんまにゴメンな。明日やと思ってたのが今日やってん」
おお、そうなんや
「あのあと大丈夫やった?」
うん、大丈夫。普通にちょっとお寿司食べて帰ったよ
「・・・」
「あのさ・・・実は今日嘘ついてることがあるねん」
え??? どうしたん??
「実は、明日の予定が今日やったって言うたやん?」
「あれ、ほんまは私知っててん。ちゃんと覚えててん」
「でもせっかく、君に会えるから30分ぐらいしか会えないって分かってたけど、会ってん」
あぁ、そうなんや。そういうことやったんか、わざわざありがとう。
「じゃあ次は二郎系やで、絶対行こな」


電話は終了した。



わけがわからなくなった。

まず、30分で切り上げたのは、僕のことを諦めたからではないという可能性が出てきたが、十分その可能性もまだ残っている。ミサキが嘘をついている可能性があるからだ。
そして、30分くらいしか会えないのは分かっていたけど、会えるからあったとのことだが、それが本当なら嬉しいが。僕も移動の時間とお金をかけているわけで30分で切り上げられたら僕にも損害が発生しているわけだ。もう少し他人のことを考えた方が良い。
そして、僕と寿司を食べたあとに予定があるから、それを分かっていたから、あの時ミサキは寿司をあまり食べなかったのだ!!!伏線回収。


急にミサキがわからなくなった。意図が読めない。目的がわからない。


ミサキがもし仮に僕に対して、恋愛的な関係になりたいのであれば僕は彼女がいるわけだから、もう終わらせようと思っていた。
ミサキがもし仮に僕に対して、宗教やマルチ商法の勧誘、高い壺や美術品を買わせようとしてくるなら、面白いからこの関係を続けようと思っていた。

しかし、ミサキはそのどちらでもなかった。30分の食事で勧誘のことなんて少しも匂わせなかった。
それに勧誘するのに二郎系のラーメン屋さんい行かないだろう。

次に考えられるのは、最初に会った時に言っていたとおり「友達になりたい」。
それか「馬鹿」。他人のことはあまり考えられず、自分がしたい時にしたいことをしている人
この2択の可能性が出てきた。

少なくとも、僕の経験上僕のことをかっこいいと言ったり、別れ際に「君の初二郎は私のものだよ」なんて決め台詞を言うやつはどう考えたって、頭のイかれた変なやつなことは間違いないだろう。

もう少しミサキとの関係を続けてみようと思う。

僕がミサキと二郎系ラーメンに行ったのか行かなかったのか。ミサキはどうなったのか。それはまた今度にしよう。