空想社会人日記

※フィクションです

欅坂46

先日欅坂46の『僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46』を観た。
この映画の公開は2020年9月。当時の僕は社会人2年目。

正確には観たというより、やっと観れた。

最近でいうと、シンエヴァンゲリオンスパイダーマンノーウェイホームといった映画があったが、それらを観て僕はなんだか悲しい、寂しい気持ちになった。
随分昔、小学校の時に出されたナゾナゾの答えをずっと考えていて、ついにその答えを教えてもらったような嬉しい感覚があった。
それと同時に、卒業を言い渡されるような、強制的に終了の宣告をされたような、もうこれで終わり!これが終われば子供じゃありません、もう明日からは大人です!頑張ってください!みたいに言われた感じがして悲しくなる。
この感じを言い表せる言葉ってあるのだろうか

僕は僕の中の欅坂46を終わらせたくなかった。
だから当時映画館には観に行かなかった。
泣いちゃうかも知れなかったし。

僕はアイドルのファンではないと思っている。僕がファンなら本当のファンに怒られる。僕は欅坂46は大好きだが、握手会には一度も行ったことがないし、CDはKEYAKIHOUSEが見たくて黒い羊をメルカリで全タイプを安値で買った。ライブは2018年のアンビバレントが発売された後の夏の全国アリーナツアーしか行ったことがない。当時彼女がチケットを取ってくれた、ありがとう。ちなみに僕は、人生で2回しかライブにいったことがない、欅坂46小田和正。その程度ってこと。

僕は学生の頃はほぼ全ての番組(主にバラエティー)を録画し自宅に帰ってから全ての番組を徹夜で1,5倍速でみるという生活を送っていた。
だから欅坂46を割とはやい段階で知っていた。

2015年に『欅って、書けない?』という彼女たちのバラエティー番組が始まった。単純に面白かった。
そして2016年にデビュー曲史上最強の曲『サイレントマジョリティー』が発表された。僕が20歳になる少し前だったと思う。その時の衝撃は計り知れなかった。

サビでセンターの女の子が後ろから歩いてきて、それ以外のメンバーはしゃがんでセンターの子の花道を作っていた。
歌詞も挑戦的で攻撃的ですべてが衝撃だった。
ましてや僕は、サイレントマジョリティーを発表する前に、彼女たちのバラエティー番組での様子を見ているから余計に、あんなに良い子たちがこんな曲を歌うのかと。
そしてこんな強烈なメッセージ性、他のアイドルがやっていただろうか。まして同時期にいた他のアーティストという括りでみても誰かやっていたのだろうか。おそらく同じようなことを挑戦していた人たちはいるかもしれない、でも僕の耳に届いていないということは一般大衆の耳には届いていないはずだ。インディーズのそこらのバンドマンではない、AKB、乃木坂と続いてデビュー、世間の注目を集めやすい女性アイドルがやったからこそ意味があったし、多くの人の耳に届いたと思う。
坂道グループの名前を背負って、ソニーからデビューする子たちが、可愛らしい思春期真っ只中であろう子たちが歌うということがどれだけセンセーショナルであったか。僕は欅坂46はアイドルという歴史において、突出した影とそれを凌駕する程の輝きを持ったグループであると思っているし、チンケな言い回しであるが、伝説のグループだと思っている。

このブログは誰も見ていないし、見ていたとしてもこの映画を見ているはずだと思うからネタバレは普通にすると思う。

この映画は欅坂46の5年間を追いかけたドキュメンタリー映画ではあるが、おそらく欅坂のファンでなくとも面白い映画になっているのではないかと思う。普通に映画として面白い、架空のアイドルの映画だと思っても面白いのではないか。もちろんある程度知っていた方が良いに決まっているのだけれども。この映画は欅坂のセンター、平手友梨奈が何故あんなことになってしまったのか、何が彼女を苦しめ、何が彼女をああさせてしまったのか、何故欅坂を去ったのかというのが一つの軸としてある。そしてこのことについて、他メンバーのインタビューや、MV撮影時の映像やライブ映像はあるが、肝心の本人、平手友梨奈のインタビューはない。つまり当時の彼女の心境、感じていたことは、他メンバーの証言や映像から押しはかることしかできない。そして、その平手友梨奈の行動にみんなが振り回されていく。これはもう『霧島部活やめるってよ』と同じである。本人は出てこないけど、それによって影響された周りが、あれやこれや言って、物語が進んでいく。そして進んでいくうちに本人の像がぼんやり浮かんでくる。そういった映画になっている。だから欅坂のことを知らない人でも楽しめるのではないかと思う。

冒頭、ライブ映像から始まる。夏の全国アリーナ2018の『ガラスを割れ』。最後のサビでセンター平手が、突如として他メンバーを置いてステージから飛び出て会場の中央まで伸びる花見を踊りながら疾走。そして曲の終了と共に彼女は落下する。

暗転。

そして聞こえてくる明るい声。画面が明るくなるにつれて、それがセンター平手のデビューライブに向けて緊張しながらもセリフを練習している無邪気な姿だとわかる。他メンバーに抱きついたり、緊張してできないよ!って表情や笑顔だったり、表情豊かである。

面白いよね、映画としても。まずここは最初のグッとポイントである。
もうそんなどこにも彼女はいないのだ。いるかも知れないが、僕たちがそれを見れる日は来ないだろう。